個人再生の条件とは?〜手続きに失敗しないために〜
個人再生は、債務者にとって非常にメリットの多い債務整理です。
しかしその反面、利用するための条件は他の債務整理よりもやや厳しく、手続や必要書類に至っては複雑を極めます。
そこで、ここでは個人再生に失敗しないように、個人再生に関する条件や成功のコツをお伝えいたします。
個人再生を検討している方は必見ですので、ぜひご覧ください。
このコラムの目次
1.個人再生とは
個人再生とは、債務者を救済するための債務整理の1つです。
自己破産と同様に裁判所を通して行う手続ですが、自己破産と違って財産が処分されることは基本的にありませんし、一定期間職業制限を受けることもありません。
個人再生を行うと、債務額が約5分の1に縮減されます(債務総額が500万円以上1500万円未満の場合。どれくらい減額してもらえるかは、借金の総額や持っている財産の額により変わってきます。)。
言い換えれば、借金の8割程度がカットされるということです。
その後、残った借金を原則的に3年~5年程度かけて、毎月少しずつ返済していくのが個人再生の概要です。
また、個人再生の大きな特徴として、住宅ローン支払い中の住宅を手元に残せるというものがあります。
通常は、債務整理をすると抵当権を行使されてしまうため、住宅ローン支払い中の住宅を手放さなければなりません。
しかし、個人再生を使えば持ち家を失わずに済むので、住宅ローン支払い中の人にとっては地獄に仏です。
任意整理よりも借金の減額率が圧倒的に高いうえに、自己破産のデメリットを回避できるのが、個人再生のメリットと言えます。
2.個人再生をするための条件
メリットの多い個人再生ですが、誰でも個人再生を利用できるわけではありません。一定の条件が必要になります。
また、個人再生は小規模個人再生の給与所得者等再生の2つがあり、条件がそれぞれ異なります。
(1) 反復継続的な収入が将来にわたってあること
個人再生をするときは、裁判所に「再生計画」というものを提出し、その内容に従った返済をしていかなければなりません。
返済をするためには継続的かつ反復的な収入が、再生計画の提出時だけでなく将来にわたって得られる見込みが必要です。
このため、反復継続的な収入がない人は、再生計画の条件を満たさないことになります。
毎月給与収入のある会社員や公務員であればこの点はクリアできますが、自営業者やフリーター、パートタイマー、年金を受けて暮らしている人はどうなるのでしょうか?
自営業者の場合
自営業をしている人は、定期的な収入が無いこともあります。
しかし、個人再生の場合は「3ヶ月に1回の割合で再生計画に則った弁済ができる程度」の収入があれば問題ありません。
自営業の人でも個人再生は可能ですので、諦めなくても大丈夫です。
アルバイトの場合
単発や短期のアルバイトを転々としている場合は、たとえ毎月収入があるとしても「継続的な収入」が「将来にわたってある」とは認めてもらえない可能性が高いです。
しかし、アルバイトやパートとして雇用されてからある程度の期間が経過している場合は、今後も継続して雇用されて定期的な収入があると見込まれて、「継続した収入がある」と裁判所に認めてもらえることが多いです。
自分がどのくらいの期間雇用されており、今後も雇用される見込みがあるのかを確認しておきましょう。
年金が収入源の場合
高齢になってからもらう年金は継続的な収入とみなされるため、個人再生を認めてもらえる可能性が高いです。
一方、障害年金をもらっている人は注意が必要です。
障害が回復した場合、障害年金の支給が打ち切られるかもしれません。そうなると「継続した収入」がなくなってしまいます。
障害年金受給者が個人再生をする場合は、障害が回復する見込みがあるのか、障害の程度はどのような状態なのかを個別に判断されます。
何が基準になるのかは一般人にはわかりづらいので、弁護士と相談して見込みを聞いてみることを強くおすすめします。
給与所得者等再生の場合
給与所得者等再生でも継続的な収入があることが個人再生をするための条件ですが、これに「収入の変動幅が小さい」という条件が追加されます。
どの程度の変動幅までが許容されるのかは一概に言えませんが、概ね年収の20%程度までの変動であれば問題ないと考えられています。
(2) 借金の総額が5,000万円までの個人
個人再生をすると借金が約5分の1になると先に述べましたが、実際には借金の額によって最低弁済額が決まっています。
最低弁済額とは、その名の通り「個人再生をしても最低限支払わなければならない金額」のことです。」
借金額別に見ていくと以下のようになっています。
- 借金額100万円以下…減額なし
- 借金額100万円~500万円……100万円
- 借金額500万円~1,500万円……借金額の5分の1
- 借金額1,500万円~3,000万円……300万円
- 借金額3,000万円~5,000万円……借金額の10分の1
このため、100万円以下の借金では個人再生をする意味がありません。
また、5,000万円を超える借金は個人再生の対象外となっています。
つまり個人再生をするのであれば、借金額が100万円~5,000万円のときでなければならないのです。
さらに、個人再生ができるのは「個人」に限定されています。法人は異なる方法を用いなければなりません。
ちなみに、もし住宅ローンを整理せずに持ち家を手元に残したい場合、住宅ローンの借金額等は上記の100万~5,000万円に含みません。
住宅ローンの借金等を除いた金額が5,000万円以下であれば個人再生が可能です。
(3) 債権者の半分以上から消極的同意を得ている
小規模個人再生のときにのみ必要な条件です。
消極的同意とは「反対はされていない」という状態です。積極的な賛成ではなく、あくまで「反対がないかどうか」で判断します。
もし反対する債権者が半数以上であれば、給与所得者再生に切り替える等の処置を取りましょう。
(4) 過去7年以内に以下の措置を受けていないこと
給与所得者再生のときにのみ必要な条件です。
以下の措置とはこの3つです。
- 破産手続免責決定
- 給与所得者再生の再生計画認可決定
- 個人再生手続のハードシップ免責許可決定
要するに、破産や給与所得者再生をしてから7年経っていない場合、給与所得者再生はできないということです。
ハードシップ免責とは、個人再生をした後で債務者の責任でない事情が発生して再生計画通りの弁済ができなくなったときに、残りの借金を免除してもらえる制度です。
ハードシップ免責を受けるには再生計画で返済する予定だった金額の4分の3以上を既に返済している等、いくつかの条件があります。
上記3つの措置のいずれかを受けてから7年経過していない場合は給与所得者再生ができないので、小規模個人再生に切り替える等の方針転換が必要です。
3.個人再生で失敗する理由
個人再生ができる条件をすべて揃えていたとしても、個人再生に失敗してしまうことはあります。
代表的な失敗の原因は以下のようなものです。
(1) 再生計画に不正があった
再生計画やそれに関連する書類にはたくさんのことを書かなければなりませんが、もし財産を正しく申告しなかったり、故意に財産を隠したりすると、個人再生を認めてもらえない可能性が出てきます。
書類には正直に記載してください。
(2) 書類の提出期限を守らなかった
裁判所には、期限通りに書類を提出する必要があります。
期限を守れないと個人再生を認めてもらえませんので、ご注意ください(民事再生法 第191条)。
(3) 偏頗弁済を行った
特定の債権者に有利になるような返済を「偏頗弁済」と言います。
例えば「個人再生をすると自分の借金は減るけど債権者には迷惑がかかる。お世話になった人(家族や友人)にだけは全額返済しておきたい」と考えて、実際に借金を返済するような行為が偏頗弁済に該当します。
個人再生には「債権者平等の原則」というものがあり、偏頗弁済はこれに反する行為です。
偏頗弁済をすると個人再生を認めてもらえない可能性があるので、絶対にしないでください。
(そうでなくても、偏頗弁済により手続き後の弁済額が増えてしまう可能性があります。)
4.失敗しない個人再生のコツは弁護士への依頼
個人再生手続は必要な書類が多く、手続自体も複雑です。
法律知識のない一般人が独学で行うのは不可能とすら言われています。
しかし、弁護士に任せれば、必要な書類の収集を手伝ってくれますし、記入についてのアドバイスもしてくれます。
また、弁護士はそもそも個人再生をするべきかどうかも検討してくれます。
もし、個人再生に失敗しそうだと不安に思っている場合は、弁護士が他の方法による債務整理を薦めてくれるので、個々の案件に応じてベストな選択が可能です。
失敗を事前に防ぐためにも、個人再生は事前に債務整理に強い弁護士までご相談ください。
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